サイトウコーヒーさんインタビュー

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夕方伺った時、お店は閉店のちょっと前。
マスターは豆を焙煎中との事だったので、このお店で毎回頼む「エチオピア」と
先日マスターがFacebookで絶賛されていた奥様手作りのレアチーズケーキを頂き
ながら待つ。
このエチオピアの香りに魅了されたのは、私がワインが好きだからかもしれない。
こんなに甘い香りがするコーヒーがあるのかと衝撃を受けた。
この日頂いていた3月限定のレアチーズケーキは、レアチーズのくせのような
ものがなく、口の中ですっと、溶けていくような爽やかな甘み。
優しい甘さ。落ち着いた店内で頂くケーキとコーヒー
は極上の癒しを与えてくれた。

 

「豆をずっと後ろで焼いてても、全然苦じゃないなぁ」

仕事が終わってから取材に応じてくれたマスターの齋藤考司さん。
コーヒーの焙煎は豆の選別、そして焙煎に入る。
状態の悪い豆を選別し、豆の熱の入り具合をコーヒーの種類ごとに
変えながら焙煎するのはとても楽とは言えない作業と感じるが、苦ではない、と語る。

───コーヒーの焙煎の時間は決まっていないのですか?

「時間はあんまり、決めてないな。本当はね、決めてたの。
午後よく焼いてたな。なんでかっていうと、焙煎室に間接的に入ってくる陽光が、
豆にあたるんだけど、うちの豆にするのに、テストスプーンで常に焼き色を見るんだよね。
その時に同じ光で見たいから
午後に入る光で見ると、すごく見やすかったの。
でもまあ、そこは慣れでさ、最近は早朝や夜中に焼くこともあるよ」

───太陽の光でないとやっぱり違いがあるのですか?

「例えば電球の光の色だと、ちょっとオレンジかかってたりするから、すくって見た時に
オレンジに見えたりする。昼間の色に近いライトを当ててみるようにはしてるけど」

───かなり神経を使う作業なのですね

「前は焼いた豆を買ってたの。でもお客さんに出してるうちに納得する味、コーヒーを
出したくなって、仕入れ先の会社に行って、自分で焼きたいって言ったら
焙煎機買って自分で焼いてみたらいいんじゃない?って
うちにあるのは一回で3キロ焼けるやつなんだけど
豆って焼きあがった時にだいたい2割くらい減るんだよね。
でね、3キロいっぱいいっぱい入れちゃうと焙煎機が力発揮できなくなっちゃうから
そうなると一回に焼けるのは2キロ強くらいになっちゃうのかなぁ…」

───2キロというと、コーヒー一杯に使われるのが10~12gとか

「うちはね、20g」

───20gですか。結構使いますね

「一人分入れるなら、2杯。3人分入れるなら、4杯、10人分入れるなら、11杯。
人数+1で淹れてる。これは修業先のコーヒー屋で教わったことをそのまんま。
修業…って程でもないんだけど。2週間くらいしか通ってなかったから。
コーヒードリップするのも、焙煎で豆焼くのも教えるものじゃないって言われて」

つい先程頂いたコーヒーに20g。
以前自宅で淹れるコーヒーにはまり焙煎した豆を購入していた時期もあり、当時の自分
が購入していた豆の価格を考えると一杯に20gはかなりの量だ。

「うちの例だけど、あっためて、粉入れて、上から抽出して、まあ3分くらいを目安
に抽出量入れるんだよって。あとはもう、自分の練習だもんね
細くお湯入れて、って言われても、そこは練習しかないからさ
もう25年前の話だからさ、こう、日々やってるから、今はお客さんによって淹れ方
変えたりしてる」

─── 一人ひとり、全部変えてるのですか?

「全部変えてる。ブラックが好きな人なら、少し温度低めにして甘みと香り出るように
入れてあげようかなとか、ミルクと砂糖がっつり入れる人もいるから、そういう人には
ミルク入れた時に弱くならないように熱めのお湯でアタック感を強く出して、強めに
入れてあげると、ミルクと砂糖入れた時にちょうど良くなるから
そんな感じで調整するから、一定じゃないんだよ」

───注ぎ方、香りの出し方にもひと手間があるのですね。お湯の状態からも変えている点はあるのでしょうか?

「お湯の状態…基本は85度くらい。目安でやるんだけど、甘みが好きな人には83度くらい。
全然違うんだよ、お湯入れた時の泡の立ち具合も違うから。あとは、焙煎度の違いでも
変わるし。春ブレンドは浅煎りだから、酸味が強いの。
浅煎りのはちょっと温度高めにして、お湯をこう、とろとろとろっと
乗せるように入れるんじゃなくて、少し高めからこう、アタックするように淹れるの
そうすると、うまく抽出できる
逆に深煎りの場合は、ばたばたばたって入れないで、少し温度低めにして、乗せてあげる
ようにして入れてあげると、まろやかな苦みになる。
まあ、微差だけど…」

───微差ですよね、85度と83度の違いも私にはさっぱりなので

「それだって、デジタルで測ってるわけじゃないよ。アナログが好きだからさ。アナログの
温度計で見て、なんとなくだよね
あとは、でっかいやかんで沸かしてちっちゃいポットに入れるんだけど、沸かしてる時に
手で持った時、こう…
ボコボコボコって感覚が手に伝わってくるんだよね。あれでなんとなく今90度強くらいだな
って。それをちっちゃいポットに入れて、サーバーに入れて戻してってやると
だいたい85度くらい
まあ、それでみんな美味しいって言ってくれて、こうやってみんなリピートしてくれるから
自分の信じた淹れ方でいいのかなって、思ってるけど」

───ネル以外の淹れ方をされることもあるのですか?

「全部できるよ。サイフォンも持ってるし、器具は一通り持ってて、できるんだけど
ネルでしか教わってないし、ネルが好きだから
ここにいる間はネルでやりたいなって
ネルを淹れる布は、ネル布っていうのがあるんだけど、それを型紙に合わせてカットして
おふくろが裁縫とか好きな人だから、作ってもらって」

───専用の道具があるわけではなく、手作りなのですね。

「うん、ありがたやありがたや…って言ってる。市販のものだと深さ、大きさが決まってる
じゃない。これだと二人分くらいしか入らないから三人分くらい入るネルが欲しいなって
思って、型紙渡して頼んだの。」

───コーヒー一杯にいろんなこだわりが詰まっているのですね。
コーヒーの講座を以前されたそうですが、これを教えるのは、一言では難しそうですね。

「確かに、来てくれる人は皆ドリップの技術を学びたいって来てくれるの。
…いきなりこう言っちゃなんだけど…
コーヒーは7割が素材、二割が焙煎、一割が鮮度。これでコーヒーの美味しさが決まります」

───淹れ方が入ってないですね

「淹れ方はなに?って聞かれたときに、自分の好みにより近づけるための手段、ですよねって。
お米とかお肉とか、いろんな素材をどんな風に調理するのがいいのかなって考えてもらうの
が近いんじゃないかと思う
ペーパーみたいにクリアな味が好きな人、フレンチプレスみたいに粉ごと全部落とすみたいな
濁りが好きって人もいるし、本当人それぞれ」

───私の好きなエチオピアはとても香りがいいですけど、あれは淹れ方なのですか?

「あれも素材。精製方法の違い。
精製は2種類やり方があって、ナチュラルとウォッシュトって言うんだけど
エチオピアはナチュラルのほう。
果肉がついたまま乾燥所に並べてカラカラにする。果肉ごと乾燥させちゃうから果肉の甘みが
豆に付着するらしい。
それがエチオピアの甘みの部分、独特の甘いフルーティな部分かな。」

届いた豆はハンドピックで丁寧に選別され、焙煎機でサイトウコーヒーの豆となり、
私たちの目の前に辿り着く。

「最終的にお客さんの口に入るまでは壮大なストーリーが」

先ほどまで頂いていたコーヒーのエピソードを聞くと、また違った視点で一杯のコーヒーを
見ることが出来て面白い。
サイトウコーヒーさんにはブレンドが期間限定含め数種類あるが、そのひとつひとつのお話も
ぜひ聞いてみたいものだ。

───コーヒーがサイトウコーヒーの味になるまでのストーリーを聞かせて頂いてありがとう
ございます。ギャラリーカフェだった頃のお話を少しお聞きしても良いでしょうか?

「もともとね、このお店はなかったんですよ。
隣のギャラリーだけだったんだけど、お客さんに素敵に美味しいコーヒーを出したいなって
時に、おふくろの知り合いにサザコーヒーの当時の社長さん紹介してもらえることになって
コーヒーの事教えてほしいんですって言ったの」

───2週間程と先ほど仰ってましたが、2週間で身につくものなのですか?

「当時はネルなんて初めて聞いて、扱い方も勉強したり教えてもらったりして…
自分なんかやっていけるのかって思った。サザコーヒーのパートさんとか、百戦錬磨なの。」

───当時ギャラリーをされていたとのことですが、おいくつくらいの頃なのですか?

「23…かな?
牛久にね、美術は根付かないって言われたんだよね
土浦とか竜ケ崎みたいに出来上がった街にいて、その中間地点の中途半端
な牛久って土地では美術って育たないよって
そんなわけねえべって
だから、そこはちょっとやらせてほしいって言って
借金もさせてもらって
コーヒーも その時に来た人にコーヒーを出して」

───その時スイーツや軽食も出されていたのですか?

「その時は俺が焼いたベイクドチーズケーキ一種類だけ出してた。
クリームチーズをたっぷり使って作ってたなぁ。
今はうちのかみさんがスイーツの勉強して、当時より美味しいの作ってるよ」

───奥様が作られるケーキで、一番お好きなのは先ほど頂いたケーキですよね。

「そうそう、大好きこれ。丸のまま、ぱたーん、ぱたーん、ってやってハンバーガーみたい
にして食べたい!」

───3月限定なのが惜しいです(笑)毎月考えられるのは大変ですよね

「年々進化はしてるね。一月のタルトなんかもそうなんだけど、りんごのカットのしかたを
変えたり、クリームの作り方を変えたり。だから、お客さんの知らないところでマイナーチ
ェンジはしてる。何年か前と比べると格段に美味しくなってるから」

───いつでしたっけ、確かコーヒーのシフォンケーキがあったような気がします

「コーヒーシフォンは6月の限定だな
コーヒー豆にチョコをコーティングして、それをチョンとおいて
コーヒーのソースをかけたやつ。
深入りのコーヒーを使って作ったシフォンの上に深入りのソースがかかってます
みたいな。
うちの新しい売りになるものを作ろうって時に頑張って作ってくれたんだよ」

───カッパフェにも同じようにこだわりが詰まっているのでしょうか。

「カッパフェが出来たのは2014年だった気がする。お祭りの時期に何かやりたいなぁって
2012年くらいから試作とか繰り返して、ネーミングもカッパフェがいいなって
ちょっとふざけてるけど(笑)」

───ふざけてるんですか(笑)かわいいなとは思ってましたけど

「そう。でも中身はちゃんと考えた。コーヒーゼリーをいれたかったから、中に入れて
合うものをいろいろ試行錯誤して、最終的にいちごが一番しっくりきた。」

───コーヒーゼリーもすごくこだわってますよね

「うん、うちで焼いたもので一番深入りのやつ。それ以上焼くと炭になるよってくらい
ふかーーーく焼いて、それを細かくして熱めのお湯でガツンと抽出したコーヒーを使用
してます」

コーヒー、スイーツの他サイトウコーヒーさんのランチでお馴染みのトマトソース、
そのトマトソースを使用して地元のお米を使用したいという想いから生まれた
河童米のリゾット。
パンの店ひつじ雲さんのパンを使用したトースト。
以前期間限定で発売した芋千さんのお芋を使用したお芋のぜんざい。
サイトウコーヒーさんのメニューは地元愛に溢れている。

───少し話が変わりますが、今現在…コロナになってからの事について教えて頂けますでしょうか

「あー、そうだなぁ。コロナに入ってプラスにしかなってないかな
売り上げで言えばね、落ち込んだりはした。しょうがないかなって。でも見直す時期かなっ
て思ったよね。
これ不思議なもので、2011年がうちの10周年だったんだけど
10周年は結構大々的にイベントやろうって計画しての。ドーンって。
そしたら震災来ちゃって」

───そうだ、2011年は震災の年ですね!あの時は私の周りも大変でした

「あの時はみんな生活がルービックキューブみたいにガチャガチャガチャって変わっちゃった
からね。
新しいメニューが生まれたりね。コーヒーぜんざいとか。
うちの売りって何だろうってきちんと考え直して、コーヒーゼリー美味しいって言ってもらえ
てるから、それを使ってスイーツを作ろうってなって
お客さんに毎月お葉書を出すんだけどそこにコーヒーぜんざいできましたnew!!って
送った記憶があるなあ」

───その時の経験が今にも生きているという事でしょうか?

「震災の時に足元すくわれて、それで見直して、10年たった今コロナで見直しの時期かねって
感じだったよね。テーブルひとつつぶして椅子も7脚へらして
お客さんのマックス入る数は減っちゃったけど、逆にここに滞在してくれるお客さんが
みんな居心地よくなったって言ってくれて
だからコロナが悪いとは思わないなぁ。気づかせてくれたなって。サービス面でね
何のためのカフェなのかなって」

───マスターはお客様はもちろん、牛久のお店同士での繋がりも大切にされてますよね。

「牛久市全体がショッピングモールみたいな
どっかいっちゃうんじゃなくて、牛久の中だけで事足りる
お客さんを取り合うんじゃなくて、分けあう。
お互い切磋琢磨し合うみたいな。
前にテレビで、湯布院を見たんだけど
温泉の町で、町全体が結託していろいろコラボしたり提携してイベントやったり
するんだよね
それで自分のとこでぎゅっと独り占めするんじゃなくて、お客さんみんなで幸せになる考え方
になってみたんだよね。」

───ありがとうございます。最後にサイトウコーヒーさんの目標を教えてください

「目標はね、いつも一緒
細く長く地域に根差して商いをすることここに居続けることが街への恩返しだと思ってるので
育てたくれた街だから
要はみんなこう、まちづくりとかいうじゃない
どうしたらまちづくりになるかとか
究極だと、ここに居続けることが、俺の中での究極の街づくり
街の一部だね

あこがれだよね、ガチャってあけて「わー、あのじいちゃんまだドリップしてる」
っていわれるの

───

ガチャってあけて誰か違う人がドリップしてても
あ、これはじいちゃんの豆だから 焙煎は違うけど、これだけはたかちゃんの豆だよ
あのおじいちゃんが焼いた豆って言われるコーヒーって憧れる

───そこまで未来の姿が見えているのですね

何かをこう大きくしたいとか、店舗出すとか
舞台で活躍するとか一切なくて
細く長く属さないでのが街への恩返しだし街づくりだし 個々の土地を貸してくれた
おじいちゃんへの恩返しでもあるし
町の人たちがくる場を提供してるって点では街の人のためになってるのかなって

無理して、背伸びしない。
ありのまま、やれることをやるだけ」

───ありがとうございました。

 

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サイトウコーヒー

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